8-6.インドアと外岩はどう違うのか?--その2・身体の動き

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  前節では、慣れとかフィットという概念を使い、その代表的なテクである足使いを説明しながら、外岩の登りでは、いかに岩にフィットするかが登りの前提であり、重要なテーマであるか、を説明した。外岩ではフィットしていなければ、フォームもムーブも起こせないのである。

 

  しかし、インドアの場合の人工のストーンの足使いは、外岩の自然石へのフィットに比べると、そのテクは格段にシンプルである。つまり、インドアではしっかりした支点としての手と足が、すでに前提になっていて、そこから、いかに力を発揮するかが問われる。フィットの問題よりも、その後の運動性、身体能力、運動能力が問題となる。

 

 これをごく簡単に言ってしまうと、外岩が慣れであり、経験であるとすれば、インドアはスポーツなのである。

 

 このようなインドアと外岩の登りの作業の根本的な違いを、以下で仕分けしておいた。また、その違いがそれぞれのクライミングにどのような意味を持つかを考えてみた

 

      (ストーンへのフィット)    (身体の運動性)

 

 外岩 ・・重要=判別、技術が必要 ストーンフィットの後に発揮

 

インドア・・ ほぼ誰でもできる      運動の主目的

 

 

 外岩: ストーンへの手足のフィットが難しく、それが重視され、インドアにくらべると、同じグレードなら、そうしたデリケートなミクロのテクニックが焦点となる。運動性の発揮も、まずは自然の岩への難しいフィットができるか否かが前提である。

 その結果、難度の判定も外岩は、フィット性に大きなウエイトが置かれ、運動性それ自体のウエイトは比較的小さい。

 かんたんに言うと身体能力、運動機能が比較的低くても、フィット力が優れていれば登れる。したがって、繰りかえしの練習をすれば、つまり「慣れ」れば、登れる対象である。ミクロのテクニックに焦点が当たる。

 

 インドア: フィットのテクは単純である。しっかりした持つ手、乗る足などの支持点を前提に、身体の動きをどう組み立てるかが登りの目的になっている。もちろん悪い手で動きを起こす課題もあるが、これも結局、指の強さ、腕、肩の押さえの強さなどの運動性への要求度が主である。したがって、スポーツ性、運動性が強く、身体能力、運動能力を鍛え、どう発揮するか、が問題となる。

 運動能力に秀でたひとは、運動性を発揮できるこの登りを好む。もちろんやれば出来るのだが、岩とのフィットの方はおろそかになりがちだ。 

 

 さらに分かりやすくするために、下図で外岩とインドアに必要なテクとパワー、そして難度の関係を私のイメージで示してみた。

 

 

 

 この図で、たとえば同じ11のグレードを取ってみると、外岩とインドアの必要なテク、パワーの質の違いが分かると思う。外岩では、圧倒的にフィットのテクが大きく、インドアでは身体の運動性に依存している。

 ようするに、こうしたテクとパワーに、外岩とインドアのクライミングの違いが出る。たとえば、あまり運動能力がなくとも、繰り返して登り、岩の形状を覚えこめば、外岩は登れる。

 一方、結構、運動能力がある人でも、フィットのテクを知らなければ、意外に外岩は登れない。このようなことが、現実のクライミングの世界で起きている。

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 では、このように異なるインドアと外岩の登りで、クライミングの具体的なフォームやムーブが、その有効性でどう違ってくるか、を見てみよう。<つづく>

 

 

(コラム)

    ▽恐怖感、落下の際の岩への激突

  

 よく聞くのが、外岩は危険なので、登りに恐怖を感じる、という話である。私事にわたるが、私はインドアでは怪我ばかりしていたが、外岩では、ハングドッグの後、ヌンチャクを岩につけたままで上って膝を打ったという、明らかな不注意、というもの以外、怪我はゼロである。危険にはいろいろあるので、一概には言えないが、ここではフォールしたときのことを考えてみよう。

 一般に、インドアの壁にはたくさんのストーンが付けられている。大きいものから、小さいものまである。それに対して、外岩はおおきなでっぱりはあっても、一枚岩であるし、インドアの壁のように、壁から突然飛び出している突起などない。

 このような壁にフォールした場合、どちらが危険だろうか?

 言うまでもなく、インドアの方だろう。

 ただし、ピンとピンのあいだの間隔ということでは、外岩の方が圧倒的に大きい。ようするにランナウトしている。これは恐ろしい。とくにスラブなどは登る気がしなくなる。フォールすれば、怪我をする恐れがある。

 しかし、自信がないときは登らなければいいのである。スラブでなければ、ランナウトしていても、フォールして、壁を蹴る技術があれば、いい。せめて、壁を蹴る技術は身に付けたい。