5-1.クライミングの動的フォームを、整理して動きとして理解する

壁を前にして、どのような登り方があるか?

 壁はどのように登ればいいだろうか?左の図のような壁を登ろうとしよう。そして、めざすホールドが右上のどこか(いろいろなケースを想定し、この位置は特定しない)にあるとする。

 当然のことだが、問題は壁に複数あるストーンをどのように使って、目指すホールドを取るかである。 

 壁の登り方をカテゴライズ(範疇によって分類)したのが、下の一覧図である。一番多い例、ないし重要な順にならべている。



①正対乗り込み・・・ 身体の正面を壁に向けるタイプである。重心は両足の間にある。

 はじめて壁を前にして、ほとんどの人がとる姿勢である。高いスタンスにのりこむ場合をハイステップと呼んでいる。

 ②体側姿勢(一般)・・身体を横に向ける姿勢。静的フォームで説明した「体側姿勢」のフォームから、ホールドをとる。ビギナーが正対の次に多くとる姿勢である。運動域は狭い。





 ③カウンターバランス(=重力パラダイム転換のフォーム)・・・もっとも重要なフォームである。重心は両足の間からはずすのがポイント。遠くのホールドが取れると同時に、手が伸びるのでパンプしにくい。


④ジャンプ(および伸び)・・・ランジではない。ボルダラーがホールドを取りにいくときのフォーム。本人はジャンプしている意識はない。重心は、ストーンの上にある(片足による踏み切り)。




⑤ドロップニー/キョン・・足の置く順序が図のように①→②の順で、カウンターとは反対。重心は両足の間。身体を上げたり、固めたりする。

⑥リフティング(仮称)・・

滅多に使わないので無視して良い。左手と左足で身体を吊り上げる。右にスタンスがない場合などだ。



 以上、クライミングの登りで使われる典型的な動きを見ておいた。しかし、この中には動きとしての発展性もなく、基本のフォームとは言えないものもある。

 また、教本やインストラクションによっては名称や分類がマチマチであり、中間的な動きもあるため、細かくすればさらに分類は増える。そして捉え方が違っていたり、誤った分類と思われるものもある。だから、これらの分類はポイントさえ押さえれば良く、細かい点にこだわる必要はないだろう。

 ただこれらのフォーム、動きをグループ化すると、グループ化の基準は、身体の向きで壁に正面を向けるか、横向きか、そして、ホールドを取る際、踏み切ってジャンプ(伸び)するか、などで大分類できる。つまり、①正対のフォーム(動き)②体側のフォーム(動き)③ジャンプーーの3つで、ほぼすべてを網羅できる。

 そうしたクライミングのフォーム(動き)分類図を以下に掲げておいた。

 <クライミングの動的フォーム(動き)の分類>

 分類の説明を補足しておくと、「キョン」は壁に向いて行う場合が多く、これは厳密には正対の動きである。体側姿勢一般と言うのは、次節以下でも説明するが、かぶった壁などで横向きになったり、あるいはカウンターにいたらない軽い横向きの動き(姿勢)などだ。なお、以上の動的フォームのうち、カウンターバランスとドロップニーがティルティングの発展フォームであり、パラダイム転換のフォームと言える。

 ちなみに、これらの動きのうち、一部だが身体の補助的な動きを使い、複合的なフォームによって有効なものもある。これについては?-?で説明している。

 なお、次節からは、こうした動的フォームのうち、積極的に身に付けていかなければならない体側のグループのフォームを、カウンターバランスから順に説明していく。