4-1.体側(たいそく)姿勢で身体のくずれをふせぐ

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   クライミング中に、身体を支える方法は、筋力とか、姿勢取りとかの方法ばかりでない。弱い筋肉のかわりに骨に頼ってみたり、あるいは、構造的に曲がりにくい部分に利用したりする。体側姿勢もそのひとつだ。

  2-00で正対について説明しているが、誰でも真っ正面をむいて立っている(イ)のはつらい。だから、そのうち、片方に身体を傾ける(ロ)。

 

 

 

 体側というのは、身体の正面でなく、横側という意味である。人間の身体というのは、関節など骨の結節点が、前後に曲がりやすくなっている。屈伸も前後でおこない、かなり曲げることができるが、体側では曲がりにくく、曲がるとしても、腰の部分だけで、膝や胸部は曲がりにくい

体側姿勢」は、この姿勢の取り方をさらに推し進めたものであり、体側というのは、身体の正面でなく、横側という意味である。つまり、ただ傾けるだけでなく、身体全体を横向きにする(ハ)。
 ここで、足使いとして重要なのは、図のように片方の足が、アウトサイドになることだ。 人間の身体というのは、関節など骨の結節点が、前後に曲がりやすく、屈伸できるようになっている。 
 ただ、この関節部分も前後で曲がっても、横方向、つまり体側方向は曲がりにくくなっている。

 クライミングにおける体側の活用とは、この体側の曲がりにくさを利用するのである。

 図ー1は人が同じホールド、スタンスを使って、同じ傾斜の壁に立った場合、どちらが姿勢を保ちやすいかを示したものである。

 壁に正面を向いて身体を保持しようとすると、曲がりやすい腰、膝、背中などを、人は意識して曲がらないように力を入れて姿勢保持しなくてはならない。

 しかし、身体を壁に横に向けて保持すると、身体の構造上、膝も背中も曲がりにくい。曲がるとすれば腰だが、それもわずかだろう。

 このことは何を意味しているか?傾斜のある壁で傾いている身体を支える力は同じである。人がそれ以外に使っている力は、腰や膝、背中をしゃんと伸ばす力、ようするに姿勢を保つための力である。この力が必要かどうかが、2つのケースの違いである。

 

 このように、壁に体側を向けて立つ方が、疲れず、省力性に優れている。ただし、支える両手、立つ両足の関係もあるので、完全に壁に体側を向けて立つというのは、どうしても無理がある。

 したがって、やや斜め方向に半身になり、身体の骨格の曲がりにくさを利用する。100%でなくとも、わずかでも横方向になれば、楽になるということである。

 

 しかし、この姿勢はクライミングを始めたばかりの人には、拒否反応が出るかもしれない。なぜというと、足を滑らせて落ちるかもしれないと考えていると、横を向いて落ちることに恐怖感が持つためだ。

 しかし、慣れてくると、いつ落ちるかが、身体で分かるようになり、落ちる瞬間、正面を向くなど、安全な姿勢に戻って落ちれるようになる。経験するうちに、壁に横を向いていることに不安を感じなくなる。心配は無用だ。

  

 いずれにせよクライミング中は、必要に応じて、動くときも、静止しているときも、なるべく半身の姿勢でいるのが、省力的である。 

 これは動的フォームのカウンターバランスなどでも同じだ。

 クライミングでのレスト姿勢で、ホールドの下に入って、手を伸ばし、しゃがみこむという場合もある。身体を真下に落とすというが、そのようにうずくまるようになる場合も、片方の手に体重を預け、きもち半身になるほうが良い。そのほうが同じように骨格のかたちの利用でパワーをセーブできる。

 なお、体側を壁に向けるこのフォームには、もう1つメリットがある。

 図ー3を見てほしい。私たちは、壁を何を使って登っているのだろうか? 私たちは、あくまでもホールドとスタンスを使って登るのであって、壁の傾斜がどのように、また、どちらを向いているかなどは、実は関係ないのである。

 人が壁に向いて立つと、100度壁は、そのまま100度壁だ。しかし、ホールドの位置によっては、下の図のように、壁はときに100度以下、90度や80度にもなる。

 壁のホールドによっては正面から持つより、横からの方が持ちやすい場合もある。そして、ホールド、スタンスの位置を生かせば、傾斜をうまく殺すことも出来るわけだ。

 ようするに、ホールド、スタンスに注目し、壁の傾きにはだまされてはいけないのだ。

 もっというと、ホールドもスタンスも、手指が接触し、靴が接触する、その部分が問題であり、ホールド全体や壁がどのような形や向きであるかは、関係がない。

 つまり、手指がさわり、靴にはねかえってくるストーンの反作用を感じて、身体の動きを作っていくことが重要なのだ。


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